FLACHBACK 80's〜僕の音楽好きの原点

1980年代は今のように音楽ジャンルや音楽メディアがそんなに多様化していない時代でした。故に音楽情報を提供するメディアの主役はテレビであり、「ザ・ベストテン」を始めとする音楽番組を、各局がこぞってゴールデンタイムにぶつけてきている時代でした。当時小学生だった僕もそのような番組をよく見ていて、特にチェッカーズが登場した時なんかは目がテレビに釘付けでした。そしてこのような傾向はラジオにもあり、週末になると多くのランキング番組が存在していました。そんな中、僕の地元・福岡で、日曜の昼に放送され、多くのリスナーの支持を得ていた人気番組があり、同時にそれは、僕に最新ヒット曲を中心とした「現代音楽」への興味と関心を抱かせてくれた、正に音楽好きの原点ともいうべき番組だったのです。
RKBベスト歌謡50」・・・確か僕が生まれた年にオンエアがスタートしたいう覚えがありますが、日曜の正午から5時までの実に5時間に及ぶ生放送のチャート番組でした。あれは確か僕が幼稚園児だった頃・・・、この「RKBベスト歌謡50(以下、ベスト50)」から流れた、アリスの「チャンピオン」が、僕が生まれて最初に覚えた現代音楽でした。それ以来、ベスト50でオンエアされる現代音楽に興味を持つようになり、毎週日曜日になる度によく聴いたものでした。特に家族で車で出かける時は、必ずといっていい程ラジオを勝手にRKBにチューニングしては、そこから流れる曲に聴き入っていました。この番組は正に、「ランキング番組の見本」ともいうべき番組構成で、「チャートインした50曲は全てオンエアする!」というコンセプトの元、最初の40曲は1コーラスのみながらもしっかり紹介し、ベスト10はどんなに長い曲でも必ずフルコーラスで紹介してくれました!その為、当時CDなどなかった時代はこのベスト10の時間を狙ってはカセットテープに録音し、その曲を繰り返し聴いたものでした。この番組をきっかけに覚え、そして憧れを抱いた歌手は数知れず・・・チェッカーズを筆頭に、アルフィーに安全地帯、C-C-Bに少年隊・・・さらにはwinkもよく聴きました。松田聖子中森明菜、マッチにトシちゃんにシブがき隊も最前線で活躍している時代でした。あとヒロミゴーが「ジャパン!」をヒットさせたり、クリスタルキングの「大都会」や寺尾聡の「ルビーの指輪」なんかも印象的でした。
加えてDJの林幹雄さん(当時のRKBアナウンサー)は実に丁寧に、そしてあくまで音楽中心の番組コンセプトを守りながら番組を進行していました。日曜日は林さんの声を聞くことが日課になっていたような気もします。ホント、ラジオ番組のアナウンサーの見本のような人でした。だから林さんがDJを降りたときは本当に残念だったのと同時に、この頃から僕の音楽との向き合い方も大きく変わっていったような気がします。ちなみにこの番組は地方ローカル局の番組にも関わらず、番組スポンサーが、何とあのトヨタ自動車!だったこともあり、景品がやたら豪華でした!例えばベスト10の順位を10曲全て当てたら、その日に紹介した曲50枚分のレコード+最高で10万円!の賞金が当たる、という、ローカル局としては破格の景品だったのです!僕も何度か応募した事がありますが、5曲以上当たった試しがありませんでした。けどいるんですよね、実際に当てた人が!けど複数当選の場合は抽選というあたりは、何か子供ながらに残酷だなと思ったものでした。このプレゼント作戦も手伝ってか、このベスト50は、日曜昼間における福岡のラジオ聴取率では常にトップに立ち、店内放送でも実にいろんなところで放送されている、正に「日曜午後のお約束」的な番組でした!
しかしそんなベスト50も時代の流れには勝てず、林さんがDJを降りた後も後任のDJと共に番組を継承していくも、世間一般的なランキング番組の衰退傾向に乗せられるような形でリスナーが離れていきました。やがて一部の特定アイドル(当時は低迷期を迎えていたジャニーズ系アイドルが特にそうだった)のファンが集中的にリクエストをするようになり、ランキングも少しずついびつなものになっていきました。加えて福岡に音楽FMの位置付けを持つCROSS FMが開局し、音楽好きの若者はCROSSを始めとしたFMに流れ、AM局は次第に中高年寄りにシフトしていくようになりました。やがてトヨタもスポンサーを降り、そして、次第に地元ファンの支持をつかんできた福岡ダイエーホークス(現ソフトバンク)の試合中継を望む声が大きくなったこともあり、1995年の年間ランキングを最後に、ついにベスト50は長きにわたる歴史に終止符を打ったのです。
あれから10年・・・音楽と現代人の向き合い方はかなり複雑に変化していきました。僕もその間、洋楽に目覚めては広く浅くいろんな曲を聴くようになり、そしてこの「人生は娯楽だ!」においてあらゆる音楽特集をするまでに至ったのですが、その全ての原点となったこの番組に出会えていなければ、もしかしたら、音楽にあまり興味を持っていなかったかもしれません。そう考えると、偉大な番組だったんだなぁ、と、しみじみ思うのでありました。この記事を読んでいただいた福岡出身の方、もしくは現在も福岡で暮らしておられる方で、僕と同じようにこの番組にお世話になった方も、きっといらっしゃるのではないでしょうか?