「日本のGTカー」の50年

レガシィやレクサス以外も取り上げる自動車カテゴリー、けど結局はマニアック・・・。そんな今日取り上げるのは、恐らく過去に発売された日本車の中で最も多くのファンを持つであろう、「カローラ」「クラウン」同様誰もがその名を知っているクルマ・・・日産スカイラインの話です!
CMでイチローが宣伝している通り、今年でスカイラインは生誕50周年を迎えます。一つのクルマが50年もの長きに間に渡り作られたというのは、やはり多くのスカイライン開発者達の情熱と、それを支持してきたファンあってこその賜物だと思います。しかし、その50年は決して順風満帆なものではありませんでした。
  
まずはスカイラインの歴史を振り返る、こちらのページを御覧下さい!
http://www.carview.co.jp/magazine/special/2006/06nissan_skyline/
  
クラウンがほとんどコンセプトを変えることなく、50年以上に渡りただただ「熟成」してきた(ラインナップや排気量は変化していったが)のに比べ、スカイラインの場合、生い立ちは「プリンス・スカイライン」という、日産じゃない自動車メーカーによって作られたものだったのです。
かつて天皇陛下の車として知られた、「プリンス・ロイヤル」をも生み出した自動車メーカー、プリンス自動車によって作られた初代スカイラインはデビュー当初、排気量1.5Lの大衆車という位置付けのクルマだったのです!今ではヴィッツやフィットにも搭載されているサイズの排気量だったのが、今では倍以上の3.5Lなのですから、当時では全く検討すら付かないことでしょう。
それが2代目でレースに出場し、当時絶対的速さを誇ったポルシェのレースカーを、一時的のみではあるが抜き去るという歴史的快挙を達成したことから、「スカイライン=スポーツカー」という方向へと変わって行ったのです。
やがてプリンス自動車は日産に吸収合併され、今の「日産スカイライン」になったのですが、このクルマは常に「スポーツカー」と「デートカー」の両面からユーザーに訴えかける政策を取り続けてきました。いや、そうせざるを得なかったのかもしれません。3代目に登場した名車「2000GT-R」でサーキットの帝王となった一方、一般ユーザーには「愛のスカイライン」というキャッチコピーで親しまれたスカイラインは70年代に全盛期を迎える。特に4代目の「ケンメリ」はキャンペーンも大いに話題となり、歴代最高のヒットとなりました!一方スポーツ車には強烈な逆風が吹き荒れる時代故、「ケンメリGT-R」はわずか197台生産しただけで消えてしまいました。この頃から、モデルチェンジの度に「スポーツ」と「コンフォート」の間を行ったり来たりするような歴史が続いていきました・・・。
 
下の写真は、そんな「スカイラインGT-R」のイメージを最初に強烈に植えつけた、3代目「ハコスカGT-Rのレース仕様です。夏に福岡に帰省した際に天神イムズでやっていた、スカイラインメモリアル展示会で撮ったものです。
 
そしてこちらは・・・youtubeにアップされていた、1972年の「ケンメリ」のテレビCMです!!35年も昔のファッションや風景、そしてCMソング「ケンとメリー〜愛と風のように」・・・生まれる前なんだけど強烈に懐かしい!

方向転換の歴史はついに世紀末まで続き、やがてコンセプトが古くなってきたことを指摘する自動車ファンも多くなってきたことから、スカイラインは行き場を失ってしまいました。いつしか「GT-Rを作るためのベースカー」という認識さえも持たれるようになってきた2000年、カルロス・ゴーンCEOが「日産リバイバルプラン」を掲げた頃に自動車紙を賑わせたのが「スカイライン消滅?」というニュースでした。当時の僕も、この名誉あるブランドが消えていくことを覚悟していたのですが・・・全く意外な形でスカイラインは継続され、それが大きな議論と反論を呼び、スカイラインの21世紀は波乱のスタートとなりました。
当時「ローレル後継車」と呼ばれていた、XVLという大型セダンに「スカイライン」の名を付けて出てきた先代モデルは歴代スカイラインファンの大ブーイングを受けました。僕もその中の一人で、正直理解に苦しみました。何といっても、車に詳しくない人でも分かるスカイラインのヘリテージ・丸型4灯テールランプが廃止されたことが一番の反感を買ったのです!そして、アメリカありきの開発思想・・・皮肉にも(?)アメリカ仕様の「インフィニティG35」は大ヒットし、先代スカイラインは正に、「アメリカ向けに作られたクルマのお下がりにスカイラインの名が付いただけ」という印象を持たれてしまうのでした。
しかしある評論家は、「先代のモデルチェンジは、長嶋茂雄がいきなりイチローになったかのようなもので、70年代頃に出来上がったイメージを長年引き継いできたものをいきなり21世紀仕様に変えたことに対する反動の表れとも言える」と評していました。だから日産は、いきなり変わってしまった「21世紀スカイライン」のイメージ定着の為に先代のコンセプトを熟成し、現行モデルをリリースしたのだと思います。
 
CMに渡辺謙イチローを起用するなどの並々ならぬ意気込みで望んだ現行モデルのセールスは好調のようで、特に「もう一度走る歓びを」と、ミニバンから乗り換える50代男性が最も多いユーザーなんだそうです。伝統の丸テールも、微妙ながら復活しました!先代の中途半端さもリファインされ、商品としての魅力もアップしました!そして秋には、スカイラインの象徴とも言うべきクーペが登場します!
 
写真はメモリアル展示会の際に出展されていた、新型クーペのプロトタイプモデルです!全国の日産ギャラリーのみで特別展示されているのを見てきたのですが、ボディラインはとてもセクシー!うねるようなフロントや、力強さをアピールする大径タイヤなど、外観だけでも期待が高まるその実力に興味津々です!
そして、いよいよ21世紀仕様のGT-Rも登場!但し、こちらは「日産GT-R」という車名でリリースされるのが有力視されています。一方で、「日産インフィニティGT-R」という車名説も。とはいえまだ消えていないのが「日産スカイラインGT-R」という車名!もしかしたら、次世代GT-Rスカイラインとして出てくるかもしれません!

正直言って、僕は日産のクルマは好きではありませんが、この「スカイライン」という伝統の車名と、ファンの期待に応え続ける走りの楽しさだけは、絶えずに育てていって欲しいと思います!(もちろん伝統の丸テールも!)

http://www2.nissan.co.jp/SKYLINE/V36/0611/index.html