もはや「他人事ではない」ホンダF1撤退

royaldo2008-12-05

会社帰りの電車でインターネットニュースを見ていると、とても信じがたいニュースが突然飛び込んできた。
 
「ホンダ、F1撤退」
 
ついこの間2008年シーズンが終わったばかりのF1。だいたい各チームやメーカーがF1を撤退する時はシーズン中に発表される事が多いが、今回のホンダに関しては、まさかのシーズンオフ。発表されれば即撤退。第2期のように、地元ラストランを含めた「ありがとう」ムードの中で惜しまれつつ終了という訳にはいかなかったのが、あまりに哀し過ぎます・・・。
 
僕が最もF1に熱くなってたのは1991年。当時は恐らく日本で最もF1熱が高まった時代だと思います。バブル崩壊直後とはいえ、数多くの日本企業がこぞってスポンサーとしてF1に投資。フジテレビのF1中継も高視聴率を記録し、テレビの前ではF1マシンのエギゾーストノートと古舘伊知郎の絶叫がこだましていた時代。サーキットでは「日本F1のパイオニア」だった中嶋悟をはじめ、A.プロストやN.マンセルなどの個性的大物スターが揃い踏み。その中でも、今もなお日本のF1ファンの間で一番愛されているのが故アイルトン・セナ。そんなセナが築いた3度の栄冠は全て、日本のホンダエンジンによるものでした。そして、セナは日本を愛し、日本人はセナを愛した。そしてそこにはいつも「POWERED by HONDA」・・・。それだけに前回の撤退は、自分が一番応援していた者が去っていくという寂しさと、「今までありがとう」といった感謝の気持ちで満たされた終幕でした。
ところが・・・時は流れ、かつて程盛り上がらなくなった(失礼!)F1サーカスにおいて、やはり第2期の栄光の幻想を照らし合わせながら、全く勝てないことに多くのファンの落胆を生んでいた今のホンダF1にとって、そんな「ありがとう、さよなら」などと感傷に浸っていられる場合ではいられないような去り方。その理由が・・・あまりにも早すぎる勢いで世界中を襲う自動車産業不振!アメリカの金融危機をきっかけに、すさまじい勢いで世界経済は崩壊し、つい1年前までは「過去最高益」などと盛り上がっていた日本の自動車産業が、わずかのうちに奈落の底へ・・・。日経平均株価が1年前の約半額になるなどの非常事態が、非正社員への容赦ないリストラという悪夢のシナリオへ。ホンダも正に数千人単位で人員削減を進めようとしている訳で、そんな折に結果も出ないのに年間400〜500億円もの投資が必要なF1活動など継続不可能だと判断したのでしょう。これまでホンダF1を応援してきたファンや、念願かなって日本グランプリが帰ってきた鈴鹿市民にとっては、愛する者が突然この世を去るかのような終幕。しかし、その原因が世界的不況にあるというのなら・・・窮地に陥った自動車メーカー各社を主要顧客とする僕の会社にとっても、当然大きな打撃になることは言うまでもありません。現に、追加減産が発表されたばかりであり、よもすれば今期の業績悪化と、来年のボーナス大幅減は避けて通れません・・・。だからこのホンダF1撤退報道は、第2期のような「寂しさ」ではなく、我が身に降り掛かる脅威として捕らえてしまうのです。
 
僕にとってはプロ野球の次に結果が気になるスポーツだったF1。特に「日本の車は世界一だ!」と信じてやまない僕にとって、やはりF1では多くの期待をホンダに寄せていました。かつてM.シューマッハと共にフェラーリを再建、そして黄金期を築いたロス・ブラウン氏を招聘し、2008年を捨ての1年としてでも次のシーズンに向けて入念に準備を進め(たと言われているが真相は”?”)、日本人なら特別な何かを感じるに違いないはずだった、A.セナの甥、ブルーノ・セナの加入も噂されていただけに、全ての夢は藻屑と消えてしまった・・・。ホンダのスローガンだった「The power of Dreams」も、急速な金融危機には勝てなかったと思うと、やはり悔しい思いが込み上げて来ます。そんな思いをも吹っ飛ばしてしまう不況ムードの中、僕達は再び、バブル崩壊後の平成大不況のような「反省の時期」を迎えたのかもしれません・・・。
2009年は、経済的には厳しい1年になりますが、せめて心は笑っていたい!物質的幸せでなく、精神的な幸せを求める日々の幕開け、せめてそう信じたいです!